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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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あなたは知らない-1
2011年09月03日 (土)
「おはよう、白井さん」
 窓際のポールを握ったまま流れる景色をぼーっと眺めていたわたしの耳に、聞こえるはずのない声が聞こえた。慌てて振り返ると、すぐ後ろに見覚えのある男性が一人立っていた。
「課長っ! おはよう、ございます」
 驚きと嬉しさに大きくなりかけた声をぐっと飲み込んで、朝から一ミリの隙もないぱりっとしたスーツ姿に頭を下げた。
 課内全員から課長と呼ばれているが、実際には課長代理だ。前課長の栄転に伴って、係長から課長代理に就任した。ウチの会社に出入りしていた他社の営業から引き抜かれたと言う、超やり手の三十二歳。元営業なだけあって、誰にも公平に優しく丁寧だが、残念ながら既婚者。学生の頃にチラシモデルのバイトをした経験を生かして、ステテコ姿できりっとポーズを決める、一撃必勝の宴会芸を持っている。
 三箇月前までは、それがわたしの知っている彼のすべてだった。
「早いね。いつもこの時間?」
 彼は穏やかに笑みを浮かべながら隣に並んで、わたしの持っているポールの少し上を持った。お尻を向けたまま話すと言うのも落ち着かず、身体をひねってドアを背にもたれさせて振り返ると、長身のスーツ姿と正面から向かい合うような体勢になってしまう。
「いえ、いつもはもっとギリギリなんですけど、昨日ケータイ忘れちゃって。ロッカーの中ってわかってるし普段からきちんとカギをかけるようにしてるんで、それは大丈夫なんですけど。でもやっぱ、なんか落ち着かなくって、早めに出てきちゃいました」
 携帯電話は現代人の必需品だ。ケータイ依存症などと揶揄されるほど重症ではないが、それでも一瞬でも手放したくないと考える人はさして珍しくないと思う。それに、今どき単に電話としてのみ使っている人などほとんどいないだろう。スケジュール管理とアラームに連絡先、秘密のメモやメールなど、人に知られてはいけないプライベート情報が満載だ。家に帰ってから、カバンの中の定位置に携帯が入ってなかったのに気付いたときを思い出すと、今でも冷や汗が出てくる。もしもあのときのわたしを見ていた人がいたなら、お腹を抱えて思う存分大笑いをしてから、さすがに同情して一緒になって探してくれたと思う。それくらい、昨夜のわたしは必死だった。
「ああ、なるほど。それで」
 くすっと笑いながら彼はちらりと周囲に視線を向けた。釣られて電車内を見回しても、わたしの知っている顔は一人もいない。当然だろう。始業時刻の一時間近くも前に着く電車に乗るOLの話など、給湯室でも聞いたことがない。周りはまったく知らない顔ばかり、しかもどの人も耳をイヤホンで塞いだ上で、目は手元の新聞か本か、あるいはケータイなどのモバイル機器に向いていて、他人にはまったく興味なしを力いっぱい体現している。
「それで、昨夜のぼくのメールを無視したんだね」
 誰かに押されたかのような自然な動きで大きな身体が近寄ってくる。心臓がどくりと鳴るより早く、腰の辺りに腕が回ったのがわかった。

 -つづく-
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あなたは知らない-2
2011年09月09日 (金)
「いえ、無視したわけではっ」
 誰もこちらを見ていないとわかっていても、ここまで人の気配があっては慌てずにいろと言うほうがムリだ。声をひそめて反論しながら、少しでも離れようとドアに背中を張り付かせるわたしに、彼は唇の端を歪ませて密やかに笑った。
「返信しなかった。それは事実だね」
「い、いや、だから、その……」
 腰を抱いた腕がお尻を撫でた。スカートの上からいやらしい手つきで撫で回しているのがわかる。そう言うことをされると、いろいろと思い出してしまう。記憶に引きずり出されるように奥のほうからじゅんと滲んでくる。その事実を否定するような思いで余裕の笑みを睨み上げた。
「ダメですってば」
「ダメか。なるほどね」
 電車の揺れに併せてふっと寄ってきた唇が、ピンで留めた額の髪の生え際に一瞬だけ触れる。やわらかな感触とちゅっと軽く鳴ったキスの音に、寒気に近いようなものが背筋を上った。
「今日も、いいにおいがするね」
 髪に鼻先を埋めた彼が愛撫のようにささやいた。密着するほどに抱き寄せて、わたしのもっとも感じる場所を手のひらで撫で回す。スカートの上からとは言えデリケートな場所をさわられて、わたし自身がきゅぅんとわななく。
「ダメです、課長っ」
 口だけのわたしの抵抗は、電車内のわずかなざわめきに完全に消された。ひざ上五センチのスカートのすそがきゅっと引っ張り上げられて、二人の密着している部分だけが超ミニ状態になる。隙間にもぐりこんだ指先がふとももをすぅっと撫でて、そのまま奥へと進んできた。
「今日もナマ足だね。さわりやすいように気を使ってくれたの?」
「そ、そんなわけ、ありませんっ」
「照れちゃって。可愛いね」
 ふふっと耳に息を吹きかけるように笑いながら、指先が大胆に入り込んでくる。もし誰かが気付いたらどうするのかと、恐怖に身をすくませるわたしのことなど知らぬふりで、薄いショーツ越しの指が動き始める。
「あ、んっ」
 日本の指で丘を挟むように捏ねられて、穏やかな快感が上がってくる。じんわりと潤み始める。縦のラインに指先を食い込ませてゆっくりとすりつけられると、痺れるような感覚が身体の奥まで流れ込んでくる。優しく押し当てられるたびに目の前が眩んで、どんなに耐えようとしていても身体が震える。いつのまにか、わたしは抱きつくように彼の腕に指を食い込ませ、胸に顔を埋めていた。

 -つづく-
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あなたは知らない-3
2011年09月14日 (水)
「ふっ、は……ぁっ」
 ショーツのクロッチ部分が指にきゅっと押し込まれる。少しざらついたコットンの感触がすりつけられる。つんと突付かれるたびに悲鳴を上げてしまいそうになる。目を閉じて息を止め、必死で声を飲み込めば飲み込むほど、背徳感にコーティングされた快感が膨れ上がる。
「んっ、くぅ……っ」
 くにっとこすれた場所から流れた電気のような感覚にぶるりと身体が震えた。
 人ごみに前後から強く押し挟まれぴたりと密着しすぎていて、ショーツに押し当てられた手のひらは動かない。かろうじて指だけが自由なのだろう。それでもこの状況で密やかな行為は充分すぎるほどに刺激的だった。
 駅に止まるたびに車内の人口密度が高まり、四方八方から腕や鞄が押し寄せてくる。ドアにもたせかけていたはずの背中からも誰かの体温が伝わってきていた。抱きしめられるように課長と密着した身体を離す隙間もない。
 声は上げられない。抵抗もできない。ましてや、誰かに助けてもらうこともできない。これほどまでに他人の気配を近くに感じながら、スカートの中にもぐりこんだ指に与えられる快感に声を殺して身悶えるなどと言うことがわたしの人生で起こるなんて、考えたこともなかった。電車内のざわめきも規則的な揺れも、さわやかな朝の陽射しさえ遠くに感じる。
「あっ、んんん……っ!」
 誰もが耳を塞いではいるけれど、それでも誰かが押し殺した喘ぎ声を聞きとがめるかもしれない。様子が変だと気がつくかもしれない。
 ふと新聞から顔を上げた年配のサラリーマン風の人は、あくびを繰り返しながらイヤホンを何度も耳に付け直している学生のような人は、そして、万歳をするように両手でつり革を持って、電車が揺れるに任せてふらつきながらずっと目をつぶったままの若い男性は、本当に、なにも……?
「あ……、はぁっ……」
 いけないと思えば思うほど頭の芯が痺れてくる。立っていられなくなるほどの快感がわたしを襲う。身体の奥からとぷっと流れ出てくる。その吸収しきれないほどの量に、クロッチの辺りがもったりと重くなってきているのもわかる。
「いい顔だね。そんなに、気持ちいい?」
 舌先がちろりと耳のふちを舐めて、吐息を吹きかける。涙でぼやけかけた視界をそれでもなんとか上げて、その表情を間近で見た。笑みを残した穏やかな目が愉しげに嬉しげに、わたしを見つめていた。

 -つづく-
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あなたは知らない-4
2011年09月16日 (金)
「あ……か、ちょ……」
「直接、さわるよ」
 涼しげな顔のまま、それでもわずかに乱れた息遣いが耳元に低くささやいた。あっと思う暇もなく、ショーツがくいと引っ張られる。ふわっと空気が流れたのとほぼ同時に、隙間から入り込んできた指先の温度を感じた。身体中でもっとも敏感な部分をぬるんと撫でられて、目の前に火花が散った。
「い……っ、ひ、ぃ……っ!」
 声にもならない悲鳴は、ノリの効いた真っ白いシャツに吸い込まれた。くちゅ、くちゅ、と長い指が擦り付けられるたび、振動が全身へ広がる。彼と自分とに挟まれた胸が擦り付けられて、カップの内側でじわじわと熱を生む。いっそ自分でさわりたいと思ってしまうほどのささやかな刺激は、まるで彼に焦らされているときのようで、被虐的な記憶がさらにわたしを溢れさせた。
 ――こんなところで、こんなに気持ちよくなってしまう、なんて。
「すごいね。ぐちゃぐちゃになってるよ、ここ」
 腕にすがってシャツに顔を埋め、なんとか悲鳴を堪えるわたしの耳に、軽く歯を食い込まながら課長は笑った。
「白井さんはこういうのも好きなんだね、知らなかったよ」
「ち、ちがっ……あ、んんっ」
「違う? 本当かな?」
 長い指が痛いくらいに尖ったところをそっと突付いた。やわらかく捏ねられて息が詰まる。敏感な前のほうをさわられるたび、なにもされていないはずの奥が同じリズムでヒクヒクと蠢いた。わずかに動く空間で腰をくねらせても、さわってさえくれない。内側から湧きあがってくる苦しいほどの欲求をなんとか消そうと、ぎゅうっと閉じたまぶたの端からは涙がこぼれた。
「あうっ、ふ……ぅっ」
 それは課長に教えてもらった。
 前戯や一人遊びで我を忘れたことは何度もあったけれど、挿入の快感は知らなかった。彼を受け入れるのは、肉体よりも精神的に満たされるための行為で、男が快感を得るための協力としか思っていなかった。それ以上のことは誰も教えてくれなかった。だから、恥ずかしい体勢で圧し掛かられて、身体の奥深くを男に抉られるのがこれほどまでに気持ちいいと知ったときは、記憶に残っている恋人たちにかすかな恨みを抱いてしまうほどだった。
 課長とのセックスは、すべてが今までとは違った。わたしが感じることを悦び、もっとわたしを感じさせようと努力してくれた。その方法の内のいくつかにはひどく恥ずかしいことが含まれていて、誰も知らなかった、わたし自身さえ知らなかった、わたしを思い知らせもしたけれど。
「あっ、はぁ……っ」
 こっちにも欲しい。こっちにもひどいことをして欲しい。もっと奥まで入って、わたしを踏みにじって欲しい。電車の中だと言うのに、そんなことさえ考えてしまう。
「うっ、はぁっ……んっ、んんっ!」
 そのとき、わたしの淫らな思いを読んだかのごとく、ヨダレを垂らし続ける犬のようになっていたその部分に、なにかがぬるっと当たった。

 -つづく-
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あなたは知らない-5
2011年09月20日 (火)
 あっと思うより早く、十二分に潤っていたヒダはなんの抵抗もなくそれを飲み込んだ。ヒダの形状を確かめるように縦に何度もなぞりながら、徐々に奥へと進んでくる。浅く入り込んだ指にぐちゅっと掻き回されて、強く瞑った目の前に小さな火花が飛んだ。
「っく……ぅっ!」
 ビクンと大きく震えた身体は強い腕に抱きしめられた。横から見ればわたし自身が見えなくなるほど完全に、わたしは課長の胸の中に収まっていた。それほど強く抱きしめられていなければ、耐え切れず床に崩れ落ちてしまっていたかもしれない。
「あぁっ、ぃぃ……んっ、ぁあっ」
 くちゅくちゅと二箇所を同時にいじられ、わたしは必死で声をこらえた。前を攻める指は繊細に、ヒダを抉る指は大胆に強く、わたしはなすすべもなくその先へと追い詰められた。
「はぁっ、ぁ……だめ、もう、ホントに……っ!」
「電車の中でイくのかな?」
 快感に思考の大半を持って行かれながらも必死で訴えたわたしの耳をくすくす笑いが舐めた。
「だからもう、だめって言って……あんっ」
 ギリギリのところでわたしは踏み止まっていた。今ならまだ戻ることができる、そう告げた言葉だった。もちろん、課長もそのつもりだと思っていた。電車内での悪戯の限界はとっくに過ぎてる。この続きはまたあとで、いつもの資料室か会議室か、あるいは就業時間を楽しみに待てばいい。
 けれど返ってきた言葉は、予想から大きく外れたものだった。
「仕方ないな。声だけは出しちゃダメだよ」
「えっ? なっ……あっ、んぁっ!」
 挟むように二本の指で摘まれて息が詰まった。それと同時に、わたしの中に太いものがずぶりと入り込んできた。一気に奥まで入り込み、ぐいっと壁を押し上げる。コリコリと引っかくように指先で突付き、手首を捻って捏ねまわす。
「んあっ! あああっ!」
 巧みな指が優しく挟んで、ゆっくりと摘んだ。細かく震わせた指に揺らされてクラリと視界が一回転した。
「ひぃっ! ぃ……ぁあっ!」
 ビクンと大きく震えてもわたしを揺らす指は止まらない。行き止まりであえぎ悶えるわたしを追い詰めるように、奥まで入り込んだ指が動いた。ぐいぐいと壁を擦り上げられ、声にさえならない悲鳴が頭の中で響く。頭の芯に蜜を流し込まれるように優しく撫でられて意識を飛ばし、身体の中を掻きまわされる物理的な快感に耐え切れず全身を硬直させる。何度も何度も震わされ抉られ、永遠を思わせるほどにそれが続く。
「きぃっ! ひっ! んっ、くぅ、ぁっ! ――あ……、あっ、あぁ……、ぁ、ぁ、ぁ……っ」
 甘美な拷問に引き裂かれ、切れかけた蛍光灯のようにパチパチと弾けていたわたしの記憶はふいにぷつりと途切れ、そのまま暗闇に飲み込まれた。

 -つづく-
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あなたは知らない-6
2011年09月24日 (土)
「白井さん、ここで降りるよ」
「え……っ? あ、はい」
 がくんと大きく床が揺れると同時に腕を引っ張られ、慌てて我に返った。人ごみを掻き分けてくれる広い背中を追おうとしても、ほんの二、三分前まで快楽に酔っていた身体はじんわりと痺れたように重く、手足もうまく動かない。荒い息と赤く染まっているであろう頬を隠すためうつむいて改札口を抜け、エスカレーターに並んだ辺りでようやく人心地がついた。
「課長。これ」
「うん?」
「あの、手を。わたしので、汚れちゃってるから」
 小声で言いながらそっと差し出したミニタオルに課長が首を捻り、そして二秒後にああと声を漏らして笑った。
「大丈夫、指先だけだったから。そんなに……」
 そこで言葉を切ってエスカレーターに足を乗せ、すぐ後ろに立ったわたしに課長は悪戯っぽい顔で振り返った。そっと頬を寄せてから課長は言葉を続けた。
「そんなに濡れてないんだ。もっとしたかったけど、混んでたから手が届かなくって」
「えっ?」
 指先、だけ?
 手が届かなかった、って……?
「だからね、十一時半に資料室においで」
 ぼくも興奮してて、ちょっと夜まで待てそうもない。
「え、あ……はい……」
 いつもと少し違う照れ笑いに惹き込まれて、反射的に頷いたけれど。
「それじゃあ、また、あとで」
 手を上げて去って行く後ろ姿を見送りながら、実際にはなにも見てはいなかった。
「うそ。だって……」
 課長だと思って、なんの疑いも持っていなかった。それが違ったと言うことは、つまり。
 ――誰かがショーツに指を入れてき……た……?
 ざわりと背中を冷たいものが走る。肌が粟立つ。風が吹きつけたように首元がすうっと涼しくなった。スカートの中を空気が通り抜ける。ふとももを撫でられたような気がして慌てて周囲を見回した。
「まさか。だって、そんな……」
 周りに知っている顔はいない。誰もが忙しげに歩き、一直線に目的地へ向かっている。立ち止まっているわたしに目を向けるものさえいない。
 けれど、確かに誰かがいた。
 誰かが指でわたしを犯し、何度も何度も地獄のような快楽に叩き込んだ。指の感覚は今もまだ生々しく残っていて、思い出すだけでトロリと奥から流れてきそうなのに――。
「だれか、が……?」

 そう、誰かが。誰かが、わたしを――。


 -つづく-
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あなたは知らない-7
2011年09月27日 (火)
「課長は、朝の会議に出席、昼前から市場調査に回って、夕方に帰社……、と」
 元営業職と言う経歴のせいか、課長の仕事スタイルは、椅子に座ったままパソコン画面を睨みつけて一日を終えていた前課長とは、まったく違った。誰よりも積極的に外へ出て最前線の情報を得ようとする。そのため、帰社が遅くなれば事務仕事が滞ることもあったが、不思議と不服の声は出なかった。
「次。係長は一日外回りで直帰予定。主任は午前は企画部と打ち合わせで、午後は内勤予定、と」
 ミーティングを終えた外回りスタッフが書いた壁のホワイトボードを確認し、それぞれクセのある字で書かれた今日の予定スケジュールを日誌に写す。
 こういうものは本来は自分で書くべきだと思うけれど、これがわたしの朝一番の仕事だった。外を回っているとうっかり書くのを忘れてしまうからと、気を利かせた心優しい事務職の先輩が始めて、そのまま慣習として残ってしまったと聞いたことがある。
 昼前から市場調査、ねぇ……。
 課長は、おそらく会議は十一時過ぎには終わるつもりで、社外でランチを取ると行って出かけるふりをし、資料室でわたしと落ち合うつもりなのだろう。内勤――事務職OL三人と係長代理の四人は十一時半から三時のあいだに交代で一時間の昼休みを取るから、今日は一番に行かせてもらえば問題なく向かえる。今日は歯医者の予約があるからとでも言えば、こちらが決まり悪くなるほどの温かい笑顔でみんなが送り出してくれることはわかっていた。弁当持参組は仕事をしながら自席で食べることもよくあるから、帰りが遅れたからと叱責を受けることもない。周囲が出たり入ったりしているからか、事務職でも急ぎの仕事が入れば外回りの仕事を手伝わされることもあるからか、全員が机上で仕事をする課に比べると格段に雰囲気はゆるかった。
「ほんとに知能犯よね」
 隣のデスクに聞こえないよう小声でつぶやきながらちらりと目を上げた。首をぐるりと回すふりで視線を向けて、提出されたレポートを読む端正な横顔に見とれる。まじめな顔で書類に目を落とす凛々しさにどきりとする。今朝の電車でのことを思い出すと、それだけでもう十一時半が待ちきれないくらいスカートの奥がむずむずするけど、でも。
 ――あの指はいったい……。
 考えるたびに背中を冷たい汗が流れるような気がする。
 あの犯人がわたしたちの悪戯に興奮して乱入してきた通りすがりの痴漢だったとしたら、もちろん決してよくはないけれど、それでも状況としてはまだマシだろう。あれがもしもわたしたちの顔を知っている人だったら、もし会社関係の人間だったとしたらと考えると寒気がする。

 -つづく-
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あなたは知らない-8
2011年09月30日 (金)
 社内不倫が公になれば、課長はよくて降格、あるいは左遷、もしくは解雇……?
「うわぁ……」
 今になって思い返せば、目がくらむほどに感じされたあのゴツゴツした指の感触は、課長の指とは全然違った。課長の指は、ピアニストのようにすぅっと細くて長い。決して細すぎるわけではなくてちゃんと気持ちよくはしてくれるけれど、あの太い指でぐりっと捏ねられたときの、それだけで自分が弾けてしまいそうになった強さとは段違いだった。そんな状況じゃないとわかっていても、ゴツゴツした関節での抉るような突き上げを思い出すと身体の芯が熱くなる。
「――かちゃん。美加ちゃんってば」
「あ、はいっ」
 慌てて顔を上げると、ディスプレイの上から薄平べったい箱が差し出されていた。急かすようにトントンと揺れる箱を慌てて受け取る。中央がくびれた独特の楕円形に丸まったチョコレートが、いくつかの空欄を作りながらも整然と列を成していた。
「これは?」
「美奈ちゃんのグアムのお土産。一人三つずつね」
 唯一の同期である成美ちゃんが、さっさと箱を返してとばかりに差し出したままの手を伸ばしてくる。頷き返しながら、銀行のロゴが入ったメモ用紙を一枚ぴりりと破り取って、一番手近のチョコを急いで三つ摘んだ。
「彼氏と旅行だって。いいよね~」
 わたしの斜め前の席に座った結婚三年目の先輩OLさんが、溜息混じりに肩をすくめながら、すぅっと視線を動かした。釣られて同じ方向に視線を向けると、有給を取ったお礼でも言っているのか、ゆるくカールしたロングヘアの女性が課長の前でぺこりと頭を下げていた。横顔に浮かぶはにかむような表情は本当に幸せそうで、同性から見ても魅力的だった。
「いいなぁ」
 彼氏と旅行、かぁ――。
 思わずつぶやきながら手元のチョコに目を落とした。やや不規則に並んだ三つのチョコが勝利宣言のように見えてしまう。
 こういうとき、胸がちくりと痛む。普段からスマートでカッコよくて仕事ができる課長が二人っきりのときにだけ見せる顔を知っていることを誇らしく思うときもあるけど、でもこういう形での自慢はわたしには決してできない。もちろんそれは承知の上で、こういう関係を続けているのだけれど。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
 それでも、ノートパソコンとレジメを小脇に抱えた課長の明るい笑顔をほんの一瞬見ただけで、嬉しくなってしまう事実は動かせない。だから、わたしだけをじっと見つめてくれる、キスしてくれる、愛撫してくれる、そんな誰にも言えない濃密な時間が持てるというだけで、蕩けそうなほど幸せだった。

 -つづく-
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あなたは知らない-9
2011年10月05日 (水)
「あ、れ……?」
 思ったとおり、あたたかく見送ってくれたみんなに少しの罪悪感を抱きながら、おそらくはカギがかかっているだろうと思いながら回したノブは、あっけなく開いた。重いドアを押し開き隙間からそっと覗くと、閉館した図書館を思わせる薄暗い空間に資料棚が林立していた。出入り口のすぐそばには資料整理用のテーブルが置かれ、どこかで不要となったらしい姿見が壁にもたれたまま不機嫌そうに棚を映していた。周囲を素早く見回し、人気のないことを確認してからドアノブを押し開けたそのとき、目の前に誰かが立ち塞がった。
「きゃ……っ」
「おっと」
 反射的に上げそうになった悲鳴が大きな手のひらで覆われる。あっと思う暇もなく身体が回転して腕の中に抱きこまれ、ドアノブ内に隠れた半月型のカギがかちゃっと横に回った。
「ぷぁっ。びっくりした、課長」
「ごめんごめん。大声出されちゃうかと思って」
 抱きしめられたまま肩越しに振り返ると、明るい笑顔と一緒に額にキスが降りてきた。目を閉じて、待つと言うほどでもないほんの数秒のあと、唇が軽く触れた。音を立ててキスを繰り返しながら、課長の右手がベストスーツの上から胸を探る。
「さぁ、今朝の続きをしようね」
「やだ、だめ……」
 もちろん全然ダメじゃないし、できれば直接さわって欲しいくらいだけれど、女のほうからそんなことは言えない。ボタンが長い指にゆっくり外されるのを黙って見ているだけの状況が焦らされてるような気がして、おかしなふうに興奮してくる。
「あん……っ」
 ブラウスの中に入り込んで、半分ほど見えなくなった手のひらが、ブラの上から胸をさわる。それだけで身もだえするほど身体が熱くなってくる。わたしが身体をくねらせたのをどう思ったか、普段よりも早いタイミングで左手がスカートをめくり上げた。ショーツの上から指先をすりつけられると、熱がじわりと滴ってくるのがわかる。
「やっぱりさっきのじゃ物足りなかったんだね。もう濡れてきてるよ」
「あっ、やだぁ……」
「いやなのはここかな?」
 楽しそうに低く笑いながら、ショーツの横から入り込んできた課長の指先がぬるんと縦のラインをなぞった。
「あっ、課長……ああっ、ふぅんっ!」
 優しく何度も指を往復させながら、少し乱暴なキスがわたしの声を塞いだ。たったまま後ろから一方的にさわられていると、いじめられているようで興奮する。息を制限されたまま攻められると気持ちよすぎて気が遠くなる。

 -つづく-
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あなたは知らない-10
2011年10月20日 (木)
「じゃあ、今日は縛ろうか。後ろに手を」
「あ、はい」
 離れた唇から流れる静かな声の命令と、ネクタイを緩めるセクシーな男の仕草をうっとりと見上げながら頷いた。
 課長が縛りたがる日は限られていた。いつも縛っていると慣れてしまうからねと笑顔を向けられると、それ以上はなにも言えなくなる。愛されなくなるくらいなら、多少の不満は飲み込んだほうがわたし自身のためだった。だからこそ、今日はたっぷりいろんなことをしてもらえるのだろうと、身体が期待してしまう。奥のほうがヒクヒクしているのがわかる。優しい声でひどい言葉をささやかれながら恥ずかしいことをされると考えただけであふれてくる。
「あ……、んっ」
 背中に回した両手首に絡まる、冷たいシルクの感触に肌が粟立つ。
 課長は結び目を作らず、編み込むように器用にいくつかの折り目を作って縛る。ネクタイを結び直したとき、不自然な箇所にシワがあると後で困るからといつだったか言っていた。こんな時でさえ冷静な様子を見ていると少し寂しいような気もする。
 課長にはどれほどの経験があるのだろう。確認しようと考えたことさえないけれど、過去にわたしと同じような関係になった課員がいたかもしれない。もしかしたら、今だって――。
 頭を振って、勝手に暴走する思考を振り払うと、必死で背後の課長の気配を追った。縛った手首からすうっとひじまでを指で辿られて、ぞくりと身体が震える。反射的に腕を動かそうとした途端、ネクタイが手首に食い込む軽い痛みがわたしを襲った。縛られていると言う事実がわたしをさらに縛る。
「これだけでも好い顔するね。気持ちいい?」
「はい、気持ちいい、です……」
 初めて挿入で絶頂を得たときに縛られていたのがいけなかったのか、わたしの回路の中では『縛られる』と『気持ちいい』が繋がってしまったらしい。いやらしい言葉や乱暴に組み敷かれる体位にひどく反応してしまうのも同じ理由からだと思う。課長が言うには、女性にはそれほど珍しいことでもないらしいけれど、だからといって、はいそうですかと簡単に頷けるものでもない。
「やっ、課長……あ、んっ」
 後ろから回ってきた腕がぷつぷつとブラウスのボタンを外す。崩れるように開いた隙間から入った指がブラをずらして、その頂でささやかな自己主張をする赤い突起をぷるんと弾いた。
「んっ、んんっ」
 痛みとそれ以外の感覚が胸全体に流れる。押し潰すように捏ねられると熱くなる。痺れるようなざわざわした波がわたし自身を呼び起こす。今朝の電車のときのような、恥ずかしいほどいやらしいわたし自身をムリヤリに起こそうとする。

 -つづく-
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