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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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この指を伸ばす先-1
2007年02月20日 (火)
「――理香」
 ドアが開く音と同時に背後から掛かってきた笑みを含んだ低い声に、女子社員の制服であるチェックのベストスーツを着た小柄な身体が停止した。呼吸を止めて、まばたきを二回と深呼吸を一回、そしてゆっくりと顔を上げる。目の前に立つ相手を何度も見確かめた理香の口から、かすれた声が流れ出た。
「うそ……。亮治、先輩?」
「嘘とは失礼だな。どう見ても俺だろう」
 茫然と呟いた言葉には嘲るような低い笑みが返ってくる。
「脚ならちゃんとあるぞ。幽霊じゃない」
 濃グレイのスーツの長身がゆっくりと一歩を踏み出した。きれいに磨き上げられたビジネスシューズが威圧的な足取りで近付いてくる。理香は思わず後ずさったが、ソファセットと執務机にはさまれた狭い空間にいたことが災いした。逃げる暇もなく伸びてきた腕に捉まれる。強く圧し掛かってきた身体が理香をソファに押し付ける。ソファと亮治の身体に挟まれて身動きさえできなくなった耳元に、楽しそうな低い笑みが忍び込んだ。
「あれから四年……いや、五年か。全然変わらないな、おまえは」
「なんで、先輩がここに……」
 怯えるような理香の問いかけに、亮治はおかしそうに笑った。
「逢いたかったよ、理香」
 優しげな中に冷酷な色を残したまなざしがゆっくりと細められる。
「うそ、ばっかりっ」
「嘘なもんか。ずっとおまえのことを考えていた」
「やだ! あたし、もう先輩には騙されないっ、……ん、んっ」
 噛み付くようなキスに理香の反抗が塞がれてしまう。慣れた手が腰へと回り、タイトスカート越しにふとももを撫で上げた。薄いブラウスの下でざわざわと鳥肌が立つ。それと同時に脳裏を走った甘い記憶から逃れようと、理香は必死で身をよじった。亮治の胸をひじで強く押し返し、暴力的なキスを終わらせる。五センチの距離で薄く笑う瞳を理香は睨みつけた。
「あのとき、あたしを捨てた、くせにっ!」

 -つづく-
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この指を伸ばす先-2
2007年02月22日 (木)
 感情的な理香の怒鳴り声にも、亮治の態度は変わらなかった。前髪のあいだでその瞳が笑みの形に細まる。からかうような口調のまま理香の身体に回した腕に力を篭める。
「バカなことを言うな」
「バカはどっちよっ」
 それは五年前。夏休みに入る少し前だった。
 高校時から付き合っていた二つ年上の亮治に、理香は突然呼び出された。待ち合わせたファミリーレストランで、大きなブランド物のボストンバッグを持って現れた亮治は、これから留学するとだけ言った。そこに至った過程を全く知らされることなく、一方的に事実だけを告げたのだ。行っては嫌だと泣く理香の腕を、亮治は飛行機の搭乗時間が迫っているからと簡単に振り解いた。
「六年以内に帰ってくると言っただろう。おまえが俺を信じなかっただけだ」
「だったら、電話くらいしてくれても!」
「忙しかったからな、忘れていた」
 しれっと言い放つと、亮治は理香の身体へ指を這わせた。
「やだ、やめてっ」
「安心しろ。おとなしくしていれば、ひどいことはしない」
 なだめるような口調で、けれどその右手は素早く理香のベストとブラウスのボタンを外して行く。理香がどれほど抵抗してもその指は止まらない。
「そう言う問題じゃないの! 今、あたしは仕事中で、これを置いて部署に戻らないといけないの! どっから入ってきたのか知らないけど、さっさと出てって!」
「なぜ出て行かなくてはならない。ここは俺の執務室だ」
「ふぇ?」
 間抜けな声を上げた理香の様子に楽しげに唇の端を歪ませると、亮治は長く伸ばした舌を耳へと這わせた。
「なんだ、知らなかったのか。ここは俺の伯父の会社だ」
 ちゅっと音を立てて小さなピアスごと耳朶を吸い上げられると、寒気にも似た衝撃が理香の背を走った。思わず上げそうになった声を必死でのどで押し殺したが、自分の吐息が甘く乱れ始めていること、それに気付いた亮治が薄笑いを浮かべていることまでは気持ちが回らない。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-3
2007年02月23日 (金)
「社員名簿でおまえの顔写真を見つけたときは目を疑ったよ。こんなに簡単だったとはな。それとも、俺に見つけて欲しくて、わざと入社してきたのか?」
「なにをバカなことを言って……!」
 反射的に怒鳴り返そうとして、理香はふと声を途切れさせた。
「じゃ、じゃあ……まさか、今日赴任してきたお偉いさんって……」
 そもそも理香がここへきた用件がそれだった。総務所属の事務員として、新任の執行役員のところへ必要書類を届けろと言われた。初めて入った重役専用フロアの重々しい扉をノックし、出てきた大柄な男性社員に身分証を見せるとこの部屋へ通された。指示された場所に書類を置いて、そして振り返るとそこに――。
「ああ、俺のことだな」
 亮治が簡素な言葉で全ての疑問を片付けるのと同時に、理香のブラウスがベストごと肩から引きずり落とされた。
「やっ! や、だあっ」
 首すじを這うぬるりとした感触に思わず叫んだ理香の口を、亮治の手のひらが素早く覆った。同時に丸めたタオルが口の中に押し込まれる。言葉を奪われる恐怖に理香は首を振ってタオルを吐き出そうとしたが、その上から更にもう一枚タオルを掛けられ、後頭部で強く結ばれてしまう。
「多少なら問題はないが、その調子で叫ばれるとさすがに外に聞こえるからな」
 誰かに見られると困るだろう?
 余裕たっぷりに肩をすくめながら、亮治は片手でネクタイを引き抜いた。理香の身体を軽々とひっくり返すとソファにうつ伏せさせ、抜き取ったネクタイで両手首を後ろ手に縛り上げる。皮膚の上を滑る冷たいシルクの感触に理香の身体が硬直した。
「おとなしくしていればいいものをわざわざ暴れるとは、こうして欲しいってことだろう、理香」
 ソファに顔を押し付けられたまま、視線だけを動かして斜めに見上げる理香の頬を、亮治は指先でそっと撫でた。反射的に理香は強く眉をひそめ目を閉じる。そんな理香の怯えた表情に亮治は低く笑った。
「まあ、こういうのも悪くはないな」
 片手で理香の身体を押さえつけたまま、亮治は器用に上着を脱いだ。次いで、薄いストライプの入ったシャツのボタンを上から三つ外し、袖をひじまでめくる。
「これから俺を、たっぷりと……思い出させてやる」

 -つづく-
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この指を伸ばす先-4
2007年02月24日 (土)
 両手を後ろ手に拘束されたまま、ソファのひじ掛けを枕に転んだ姿勢で理香は大きくひざを開かされていた。パンストとショーツは抜き取られ、唯一身に付けていたタイトスカートはウェスト位置でくしゃくしゃに丸まっている。ふとももの裏を押さえつけるようにして圧し掛かり、亮治はなめらかな理香の下腹部に顔を伏せていた。
「んんっ! ん、ん……っ! んくっ! ふうんんんっ!!」
 全身を強く痙攣させて、理香は咥えさせられたタオル越しのくぐもった絶叫を放った。素肌を晒した上半身には汗が光り、亮治の肩に抱え上げられた脚は指の先までが震えている。口元を拭いながら亮治はゆっくりと顔を上げ、絶頂の名残に力なく震える理香を見おろした。
「またイったか?」
 優しく囁きながら、亮治は脚を下ろした。力なくソファに投げ出されたふとももの、なめらかな手触りを楽しむようにゆっくり撫で上げる。苦しげに首を振り肩を揺らす理香に亮治は笑いかけた。
「イった直後の顔も可愛いな、おまえは」
 言いながら、やや控え目な胸元に唇を寄せ、その中心で赤く固く尖った乳首へ舌を擦り付ける。遊ぶようにぺっとりと舐め上げ、唇に挟んで甘く噛む。軽い痛みに近い快感に、理香はひくんと身体を震わせる。亮治は上目遣いに理香の表情を確認し、乳児のように吸い付いた。口内に含んだ乳首を舌と歯と唇で翻弄する。
「んっ、ふっ、んっんっ」
「オッパイもいいんだな。どこもかしこも感じるとは、欲張りな身体だ」
 低く笑いながら亮治は添い寝するように隣へ寝転んだ。左手でやわらかなふくらみを弄びながら、もう片方の手のひらを身体のラインを楽しむようにゆっくりと下ろして行く。力なく投げ出されていた理香の右足を立たせ、ソファの背もたれの方向にひざを傾けて、秘所から尻の割れ目までを目の前に広げさせる。やわらかな草むらに露の絡んだ様に目を細めながら、濡れそぼった翳りを指先で縦になぞった。
「こっちも、こんなことになってるしな」
「んんっ! くぅんっ!」
 ぐちゅぐちゅと音を立てて擦り付けられ、脱力していた理香の脚がびくりと震えた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-5
2007年02月26日 (月)
 亮治の指に応えるかのように、サーモンピンクの開口部から透明の液がひとすじ流れ出る。それを指先に絡めるように亮治はたっぷりとすくい取った。耐え切れない快感に絶え間なくひくひくと全身を震わせ続ける理香に、奇妙なほど優しいまなざしを向けながら、亮治はすでに散々になぶられ痛々しいほどに赤く腫れ上がったクリトリスに、卑猥に濡れ光る人差し指を塗りつけた。円を描くようにクリトリスの上で執拗に指が動く。
「こうすると、またいいんだろ?」
「んふっ! んんんーーっ!」
 電流のような鋭い快感が理香の全身を駆け巡った。まるで怪我をした子どもの傷口に薬を塗るように丁寧に優しく指に、強制的に何度も打ち上げられ、敏感になってしまった身体は耐えられなかった。強くのけぞり、声にならない声を上げてひざを震わせる。とろとろと透明の液をこぼしながら愛撫を請うように腰をくねらせてしまう。
「相変わらずだな、理香は。ソファにまで垂れてるぞ」
 亮治の卑猥な揶揄に、理香は荒い息で肩を揺らしながら、涙で滲んだまぶたを引き上げた。曖昧に揺れる視界の端でなんとか捉えた人影を睨みつけようとしたが、快感に融けた熱いまなざしは逆に亮治を煽った。
「可愛いな。そんなに気持ちいいか? もっと欲しいか?」
 強い快感と酸欠で赤く染まった頬に、亮治がそっとキスを落とす。ふいに触れたやわらかな感触に理香は反射的に顔をそむけようとしたが、構わず亮治はキスを続けた。
「理香」
 優しく囁きながらふとももを撫で上げ、その行き止まりへ指先を沈み込ませる。中指がやわらかなサーモンピンクへの奥へと消えて行く。その瞬間、理香は引き上げられた操り人形のように背をそらせた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-6
2007年02月27日 (火)
「んーっ! んっんっ!」
 浅く抜き差しを繰り返すと、複雑にうねる理香の内側が妖しく亮治の指を締め付ける。卑猥な水音を立てながら亮治は低く笑った。
「理香。中はもうぐちゃぐちゃのトロトロだぞ」
 快感を否定するように激しく頭を振り身をくねらせる姿を目で愉しみつつ、亮治は指先で理香がもっとも感じる場所を捜した。動きを止めさせようとしているかのように絡み付いてくる内側を、少しずつ場所をずらしながら軽く突き、指先を擦り付ける。
「んぁっ?」
「ここか?」
 背をびくんと跳ねさせる理香の反応に、亮治は嬉しそうに目を細めた。先ほどまでより丹念に指でもっとも深く感じるポイントを探って行く。
「くんっ! ん、んんっ! ふっ、ううっ!」
 内側から与えられた刺激に理香は耐え切れず声を上げた。亮治から逃れたいとの意思とうらはらに、原始的な快感を身体が激しく求める。肩を交互にくねらせ、戒められた両腕を震わせる。のどをそらせ、更なる愛撫をねだるように腰を空中に突き出す。
「遠慮しなくていいからな。いくらでもイけよ」
 涙を振りまくように首を振り身悶える理香の様子をしばらく満足げに眺め、亮治は再び大きく開いた下肢の付け根へと舌を伸ばした。指での刺激を続けながら、赤く濡れ光るクリトリスに舌を這わせる。快感にのけぞる身体を押さえつけ、亮治はあくまでも優しく舌を使った。
「くうっ! ふうっ! んんんんっ!」
 言葉を奪われた両手を戒められた理香は、許しを請うことさえ赦されないまま、壊れた機械仕掛けの人形のようにガクガクと不自由な身体を痙攣させた。細い肩を揺らしなめらかな腹部をくねらせ脚を激しく震わせて、強制的に絶頂へと押し上げられる。その執拗な愛撫は、理香が秘部から熱い液体を噴き出し、糸が切れたように意識を失うまで続けられた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-7
2007年03月02日 (金)
「う……ん……」
 夢うつつのまま寝返りを打とうとして、どこか納得のできない違和感に理香はぼんやりと目を開けた。身体の節々が痛む。指先と、そして脚に奇妙な痺れが残っている。
「あ……あれぇっ?」
 無意識に枕を抱え込もうとして、頭の下に何もないことに理香は慌てた。伸ばした手のひらに当たるのは、毎日使っている白地にチェックのテープで縁取りをした毛布でも淡いブルーのドルビー織のシーツでもなく、どこにでもあるような白いシーツを敷き詰めたマットレスの感触だった。
「え……っ?」
 軋むような痛みを訴える身体をなだめながら半回転させて起き上がると、肩からブラウンの毛布が落ちた。理香のコンプレックスでもある、ややふくらみの足りない薄い胸元があらわになる。目の前の状況が理解できず、理香はパチパチとまばたきを繰り返しながら腹部から下肢を覆う毛布を見つめた。そこに広がるのは、クイーンメリーを思い起こすような透明感のある上品で複雑な色合いのなめらかなラインだったが、今の理香にそれに感心するような余裕はない。この状況を理解しようとするのだけで精一杯だった。
「えっ? ええっ? ええええっ?」
 ちょ、ちょっと待って。ちょっと待ってちょっと待ってちょ……っ!
 理香の脳裏をかすめたのは、快感と不快感の混じったものだった。それもひどく根の深い、暗い記憶に繋がったもの。忘れたかった、忘れていたかった記憶だった。
「やだ……。あんなの、違う……、あれはあたしじゃない……っ!」
 呟くように言うと、三角座りをしたひざに額を押し付ける。ひりひりした痛みがぬるりとした感触がそこに残っていることだけでも証拠としては充分だと言うのに、それでも理香は事実を認めたくなくて別の理由を探そうとしていた。
「やだもう、誰か、助けて……」
「ああ、もうお目覚めでしたか」
 かちゃりとドアが開く音と同時に掛けられた声に理香はびくっと全身を震わせた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-8
2007年03月03日 (土)
 反射的に首をまわして理香は声の主を確かめた。そこにいたのは、ドア全体を覆い隠そうとするかのような、見事な体格の男性だった。地味な黒っぽいスーツの上からも筋肉の盛り上がりが見える。元は柔道部かラグビー部かあるいは相撲部だろうと奇妙に冷静に頷いてから、理香は自分の格好を思い出した。
「きゃ……っ!」
 慌てて腰まわりに落ちていた毛布を引き上げて身体を隠し、お尻だけで器用に後ずさる。マットレスは壁際に設置されていたため、逃げると言うほどの移動ではない。そもそも、全裸に毛布一枚ではどこへも出られない。それでも手足をできるだけ引き寄せるように身を固くして理香は相手を見上げた。
「だ、だれ……あなた、だれ、ですかっ」
「申し遅れました。私は井出です、井出達也。今日からあなたの……そう、同僚になります。どうぞよろしく」
 男は全く動揺を見せないままにっこり笑うと、首から下げたプラスティック製の名札を指先ではさみ、そこに書かれた自分の名前を示した。理香が視線を向けたのを確認してから軽く頭を下げる。
「え、井出、さん? 同僚って、えええ?」
 話が見えず混乱する理香に淡い同情の混じったまなざしを向けながら、達也は左手に下げていた大きな鞄を軽く持ち上げた。
「着替えをお持ちしました。その格好ではさすがに落ち着かないでしょう」
 語尾に軽い笑みをにじませながら言うと、達也はゆっくりと一歩を踏み出した。理香の表情が変わらないのを確認してから、もう一歩進ませる。理香が手を伸ばせばギリギリ届くマットレスの一番端に左手の鞄を置くと大きな歩幅で後ずさる。
「着替え終えたら出てきてください」
 それだけを言うと達也は軽く一礼をし、そのままドアから出て行った。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-9
2007年03月05日 (月)
 そうか、あの人。
 達也が持ってきた鞄の中身を引きずり出しながら理香は頷いた。
 あの人、ここのフロアのドアを開けてくれた人だわ。顔までちゃんと見てなかったからすぐに思い出せなかったけど、でもあの体型は、多分。
 落ちてきた髪を無意識に耳に掛けながら、理香は空になった鞄を脇に避けた。
 シーツの上には、女性物の下着が一揃い。濃グレイのパンツスーツと衿にフリルのついた白のブラウス、そして黒のローヒールのパンプス。ご丁寧に、ブラシと小さな鏡と、花をかたどったライトストーンの付いた髪留めまでが入っていた。
「ここまで気が付くのは、逆に厭味だけど」
 筒状に固く丸められた布が三つ、半透明のナイロン袋に入っていた。総務課に居た理香は、お偉いさん同士の交流や契約の場として存在する社内ラウンジ用にと、発注の伝票を書いたこともある。飲食店などでも日常的に使われる、いわゆるおしぼりと呼ばれるものだった。
 使うけどさ。ありがたく、使わせてもらうけどさ。
 ブツブツ呟きながら理香は薄いパッケージを破った。かすかにぬくもりを残した硬いハンカチ大の木綿の布を広げ、数秒戸惑ってから、ドアに背を向けるように壁に向かって毛布を落とした。
 ひざ立ちをし、不快感を訴える箇所を真っ先に拭う。真っ白な布地に付着した、ねっとりとした粘液の正体にはわざと眼をそらし、汚れた部分が見えにくいように内側に丸めてナイロン袋に戻した。入れ替わりに取り出したもう一枚で、下腹部全体から下肢へと丁寧に拭っていく。どこかがヒリヒリと痛んだが、理香はそれを敢えて無視した。残りの一枚で顔と胸元を清め、破れたパッケージと一緒に元のナイロン袋へ入れる。
「これってサイズ合うんでしょうね」
 文句を言いながら下着をブラウスをそしてスーツを、ややおぼつかない手つきで身に着けて行く。それでなくとも理香はそれほど手早い方ではない。髪にブラシを通すまでに優に十五分以上を費やし、それでもなんとかコンコルドタイプの髪留めでまとめた髪をぱちりとはさんで、そして大きく息をついた。
 どうせなら、化粧品とかも一緒に入れておいてくれればよかったのに。
 理香は深く溜息をつきながら内心で呟いた。
 きれいにしておきたいとかそう見られたいとか、そんな積極的な考えでは決してない。時間稼ぎをしたいだけだった。ただ、このドアを開けたくないだけだった。このドアの先へと歩きたくないだけだった。その先にあるであろう現実を知りたくないだけだった。
 だって、いるんだよ。
 ぎゅっと眉をひそめて理香は唇を噛んだ。
 ――このドアの向こうに……いるんだよ……。
 それでも他の選択がないこともわかっていた。溜息をつきながら理香は立ち上がり、黒いパンプスを履いて、そしてドアノブに手をかけた。

 -つづく-
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この指を伸ばす先-10
2007年03月06日 (火)
 無言でドアを押し開けた理香の目の前に広がっていたのは、大きな執務机をはさんでやり取りをするスーツ姿の男性だった。
「――では、これを上へ回します」
「そうしてくれ」
 デスク脇に立ったまま両手に持った書類を交互に見比べる巨躯の達也と、大きな椅子で積み上げられた書類の山を前に苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる亮治は、互いに頷き合ってから、タイミングを合わせたようにドアの前に佇む理香へちらりと視線を走らせた。反射的に身体を強張らせる理香に、達也は穏やかな、亮治は意味深な笑みを浮かべる。
「お疲れさまです。どうぞ、こちらへ」
 両手に書類を持ったまま達也はソファを示す。見覚えのある、真っ黒なソファに理香は思わず顔をしかめた。
「いや、ちょうどよかった。達也、おまえ理香を連れて一緒に行って来い」
 亮治の口からするりと自分の名前が出たことに理香は身体を固くした。上目遣いで二人の顔色を窺うが、亮治も達也も全く気にかける様子はない。
「それなら、彼女の件を先にしますか」
「ああ、そうだな」
 亮治は積み上げられた書類の束の中から器用に一枚を抜き出した。それを受け取った達也がゆっくりと理香へと近づく。まるで壁が迫ってくるような感覚に一瞬怯んだ理香の目の前に一枚の書類が突き出された。
「な、なに?」
「人事異動の命令書です。今日付けであなたは榊原マネージャー付きの秘書になります。細かいことはまたあとで説明しますが、とりあえずそれだけ了解しておいてください」
「榊原マネージャー? それに秘書って……ええっ?」
 突然の聞き覚えのない言葉に理香は亮治を仰ぎ見る。人の悪そうな表情は理香の驚きを楽しむように低く笑っていた。
「そう、俺付きの。もう決まったことだからな、おまえに拒否権はないぞ」

 -つづく-
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