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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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あたしの彼はご主人さま(3)-30
2006年06月02日 (金)
「俺は、俺の母親がいなくなったのは、あいつらのせいだと思ってたんだ。言い訳じゃないけど俺もまだ子どもだったから、そうやって二人のせいにするしかなかったんだよな。今から思えば、和真にもその母親にも、随分とひどいことをした。多分あいつは、今もそれを忘れてないんだろう。まあ、ムリもないけど」
 ぽつぽつと言い辛そうに話すと、司さんはあたしの視線を避けるように顔を上げて、まるで運転に集中してるみたいに真正面を見た。メガネに街の灯りが乱反射して、その表情は全然見えないけど。
「でも、それって、昔のことでしょ?」
「いや、今もいろいろと周囲の状況なんかあってね、とてもじゃないけど溝は深まるばかり。まあ、俺も悪いんだけどさ。千紗ちゃんにも、和真との関係を知らずに手ぇ出しちゃったし」
「え、でもあのときは」
 確か、途中で。
「うん、セックスはしてないけど。でも俺らは前から険悪だし、互いに話できるような状況じゃないから。挙句、姉さんまであれだしさ。ホント、うちって節操ない人間が揃ってるよな、親父のこと責められないよな」
 乾いた声で司さんは笑うけど、全然笑いごとじゃないよ。
 それってつまり、ユーキさんはあたしと司さんがしちゃったって思ってるってことじゃない。ちゃんと誤解くらい解いといてよねっ!
 抗議の意味をこめて睨みつけると、司さんはその場を取り繕うように咳ばらいをした。赤信号にちょっと乱暴にブレーキを踏み込んで車を停めて、そして急いで新しいタバコを取り出す。火を点ける横顔が一瞬だけ強く照らし出される。ふうっと息を吐き出す唇を、あたしはじっと見つめた。
「ま、そんな感じ。わかった?」
「うん、まあ。なんとなく」
 ゆらゆらと昇って行く白い煙は、キスしたとき苦い。そのことを思い出しても、今のあたしはもう怖いとは思わない。司さんと二人っきりでも怖くない。そのことがいいことかどうか、それはわからないけど。
「司さんは、ユーキさんが嫌いってわけじゃないんだ?」
「好きかと訊かれると困るけど、そうだね、特に嫌いってわけじゃないよ」
 指先でタバコを弾きながら司さんは頷いた。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-31
2006年06月03日 (土)
「あいつは俺より頭いいし、努力家で野心家で、自分の意志を貫くタイプだ。本当はああいうやつのほうが結城の総帥に向いてるかもしれないとは思うけど、でもその強引さがいろんな問題を引き起こす原因でもあってね。そこに婚約解消とか言い出したから、うちも大騒動なんだよ」
 そう言えば、葵さんもそんなことを言ってた。
「でも、ユーキさんが一人で言ってるだけだから、全然うまく行ってないって」
「ああ、うん。婚約解消はね、ちょっと大問題」
 大問題って曖昧な表現じゃよくわからないけど、でも葵さんも望みは薄いって言ってたし、ムリなのかな。あたしとユーキさんは、やっぱりムリなのかな。ユーキさんはお嬢さまと結婚しちゃうのかな。
 お嬢さま、かあ。
「ユーキさんの婚約者って、どんな人? 司さん、会ったことある?」
「そりゃあね」
 なぜか軽く苦笑しながら、彼はタバコを深く咥えた。信号が変わって走り出した車が狭い道路に入り込んで行く。ネオンが減って暗闇に沈みがちな景色は、どこら辺かはよくわからないけど、でもだいぶん家に近づいてきたかなって雰囲気。
「確か、和真より一つ年上だって言ってたかな。美人でスタイルがよくて、プライドが高そうな子だった。俺の好みじゃなかったな。俺は可愛いコのほうが好きだから」
「へえ」
 別に、司さんの好みなんか聞いてないけど。そう思いながら頷き返したあたしに、彼はおかしそうに笑った。ゆっくりと沈み込むように車が停まる。
「だから俺は、千紗ちゃんみたいな、可愛いコがいいな」
「ふーん」
 多分、ユーキさんも司さんも、きれいな女の人なんて見慣れちゃってるんだろうな。きれいな人が身近にいすぎて、だからあたしみたいなのが珍しいんだろうな、なんて、そんなふうに考えると落ち込みそうだけど。
「だからさ。和真じゃなくて、俺にしない?」
「は?」
 その言葉が耳から脳に伝わるまで、随分と時間がかかった。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-32
2006年06月04日 (日)
 ぽかんとバカみたいに口を開けたままのあたしを見て、司さんはおかしそうに笑う。でもあたしは司さんの言ってることがわからなくて、だから簡単な疑問の言葉を返す。
「なにが?」
「いや、なにがじゃなくって」
 司さんが苦笑しながらハンドブレーキを引いた。窓越しに周囲を見渡すと、暗闇を透かして見慣れた古いアパートがあった。
 そっか。いつのまにか、もう家に着いてたんだ。全然気がつかなかった。内心でそう考えながらシートベルトを外す。足元の鞄を持ち上げてひざに置くと、司さんの手が伸びてきた。
「ちょっと。俺の話、聞いてる?」
「え、いやその……」
 思ったよりもすぐ近くにあった笑みを含んだ目と、鞄の上から強く押さえる手に、立ち上がれなくなる。計器類のパネルの灯りで照らし出されて、煙が唇のあいだからゆらゆら昇って行くのが見えた。メガネ越しの細まったまなざしの、微妙な表情の意味はわからない、けど。
「だからさ。和真じゃなくって俺にしないかって。自分で言うのもなんだけど、俺、こう見えてもそこそこ優しいよ。今はフリーだし」
「え、ちょっと、ええっ?」
 なにがなんだか、わかんない。
 俺にしないかってどういう意味? いや、なんとなくわかるんだけど、でもどうして司さんがそんなこと言うのよ。
 だってユーキさんと司さんって兄弟でしょ。そしてあたしはユーキさんとその……一応そういう関係だって、司さんも知ってるんでしょ。なのに、なんで? なんでそんなこと言い出すの?
 パニックに陥ったあたしを見て、司さんは小さく声を立てて笑った。
 鞄から手を放すとゆっくり運転席に身体を戻して、どさりと音を立ててシートにもたれた。タバコの煙を吹き上げる、どこか投げやりな表情がちょっと気にかかる。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-33
2006年06月05日 (月)
「やっぱ、信用ない、か」
 溜息みたいに白い煙を吐きながら、そんなことを呟く司さんはずるいと思う。
 こういうところ、ユーキさんに似てる。変な意味じゃなくて、ユーキさんもあたしの気を引くのが上手かった。突き放せない雰囲気で子どもみたいなわがままを言って、もう仕方ないなあとか苦笑いしながら、それでもあたしは幸せだった。
「そんなに怯えないでよ。俺、好きになった子には誠実なんだ、これでも」
「え、でも、だって」
 怯えるっていうか、突然すぎてわからないだけなんだけど。
「別に、今すぐどうのって言ってるんじゃないんだ。千紗ちゃんがそれでも和真のことが好きだって言うんなら、それはそれで、仕方ないんだろうし」
 そんな寂しそうな顔をするなんてひどい。突き放せなくなるじゃない。
「あたし……、その……」
 それ以上は言えなくて、あたしは俯いてしまう。
 どう答えたらいいのかな。こんなに心配してくれてる人なのに、それなのに、あたしはあたしのことしか考えてないんだよね。それって、あたしのほうがひどくない?
「急だったね。変なこと言い出して、ごめん」
 司さんは、こんなに優しいのに。
「あ、お腹空いてない? 食事とか……ああ、そうか。お母さん、帰ってきちゃうか」
「え、えーっと。えーっと……」
 確かにお腹は空いてるし、ママは今日は徹夜仕事になると思うって言ってたから、多分帰ってこないと思うけど、でも。
「ごめんなさい。今日はもう、帰りたい」
「そっか。うん、わかった」
 ここでいつなら空いてるとか、電話番号教えてとか言われるとちょっと困るなあって一瞬思ったけど、司さんはそういうことは言わなかった。あたしを降ろすと『それじゃ』とだけ言い残して、そして拍子抜けするくらいあっさりと走り去って行った。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-34
2006年06月06日 (火)
「なんか……ホントに疲れた」
 司さんと別れてすぐ、あたしはアパートの二階の自分の家の前にいた。ぶつぶつ呟きながら鍵を取り出そうと鞄の中を引っ掻き回して、ようやく取り出したそれを片手にドアノブに近づけたとき。
「千紗ちゃん」
 低く抑えられた声に振り返ると、人影がそこに一つあった。申し訳程度に廊下を照らす蛍光灯のせいで腰から下くらいしか見えないけれど、スーツとビジネスシューズと、なによりその声が誰だかを教えてくれる。
「どうしたの、司さん」
 あたし、車の中に忘れ物でもしたかな?
 内心でそんなことを考えながらあたしはドアノブから手を放した。二歩ほど近寄って、高いところにある顔を見上げようとした。優しい司さんの声が返ってくると思ってたし、それ以外のことなんて全く何も考えてなくて、だから普通に笑いかけた。
「――やっぱり、あいつと一緒だったのか」
「え?」
 ワケのわからない言葉に薄闇に目を凝らすと、その人はメガネをかけてなかった。髪が短かった。タバコじゃなくて、ふんわりと爽やかなオレンジのにおいがした。
 まさか……。
「ユーキさんっ?」
 本当に、本当のユーキさん? なんでここにいるの? こないだまで逢わないって言ってたのに、どうして急に……。まさか、お嬢さまとの婚約解消がうまく行ったとか? もしかして葵さんが味方してくれたのかな?
 自分にとって都合のいいことばっかり考えながら、あたしは彼に駆け寄ろうとした。今すぐ抱きついて、抱きしめて欲しかった。その胸でオレンジのにおいで、今日のことを全部忘れてしまいたかった。
「司の野郎と、今まで一緒にいたのか」
 でも返ってきた言葉は、あたしが想像したような優しさは全然含まれてなくって。
「ユーキ……さん?」
 その暗いまなざしに射すくめられたように足が動かなくなった。あたしを睨みつける、今まで見たこともない鋭い目に、呼吸さえ忘れてしまう。
 こつり。
 靴のかかとが鳴った音が、古いアパートの廊下に響いた。
「一緒だったんだな」
 ゆっくりと伸びてきた手が、あたしの手首をつかんだ。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-35
2006年06月08日 (木)
「ちょうど近くまで来てたから、電話をしたら、通じない。もう寝てるんだと思って窓を外から見てたら、見覚えのある車が近づいてきてね」
 うっすらと灯りに照らし出されたその頬は笑みの形に歪んでいた。笑ってるけど笑ってない。本能的に恐怖を感じるような、冷酷なその笑顔は。
「停まってもなかなか人は降りてこない。ようやく出てきたと思ったら、千紗ちゃんだった、ってわけだ」
 言葉を切るのと同時に、手首をつかんだ力がぎゅっと強くなった。あたしは何も言えないまま立ちすくんだまま、ただ彼を見上げる。
「あいつと、一緒だったんだろ」
 言葉は疑問系だけど、語尾は上がってない。その代わりのように、唇の端がゆっくりと上がった。明るく笑ってるみたいに見える、けど。
「ち、違うの。全然……そう言うことじゃなくって……」
 なんて説明したらいいんだろう。
 司さんは、ユーキさんとは亀裂が深くてちゃんと話すこともできないって言ってた。そんな状況って、つまり、会ってたってだけでマズい?
「ええと、その……」
 葵さんに呼び出されたって正直に言ってもいいのかな。葵さんとユーキさんってどうなんだろう。やっぱり仲悪いのかな。その辺もちゃんと訊いておけばよかった。
「あ、あの、あたし……」
 どう言ったらいいのかわからない。
 ユーキさんはそんなあたしを見て、左眼を細めるように微笑った。背筋にぞくりとくる冷たい笑顔に思わず逃げようとしたけれどムダだった。強い腕に引き寄せられて、力ずくのように抱きしめられる。
 あたしは、ユーキさんの腕にすっぽりと包まれるのが好きだった。その胸に頬をすりよせるのが大好きだった。抱きしめて欲しいと毎日思っていた。ずっと思っていた。
 だけど。
「あいつと寝たのか?」
 低く囁く声が、頭を殴ったような気がした。

  -つづく-
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お言葉いただきましたv
2006年06月08日 (木)
 おはようございます、にゃおです☆
 毎日暑くって、でも油断してると朝方寒くなってくるし、ホントに変な天気ですよね。梅雨がくるよって言ってるのになかなか雨も降らないしー。
 でも来る夏に向けて新しいキャミとブラショーが欲しいなーって思って白鳩わくドキBOXさんでイロイロと探してます☆ どうせなら真夏も暑いって文句を言うばっかりじゃなくって、思いっきり楽しみたいですよねv元気元気っ!

 お言葉いただきました☆ありがとうございますv
『ストーリー展開がとても巧くてすごいなぁと思って毎日更新を楽しみにしています♪ 』
 きゃーきゃーっ♪お褒めの言葉ありがとうございますv
 なんか照れちゃいますねぇv
 そして、昨日楽しみにしてくださってたのにごめんなさい(+_+)できるだけ毎日更新するようにしてるんですけど、ときどきこういうふうにぽこっと抜けちゃうのですよ。なので、気長~に見てやってくださいな☆
 そして、そう、ユーキさん! 今回ちょっといつもと違う余裕のないユーキさんです。落ち着いたおとなの男の人が形振り構わなくなる本気の瞬間というか、そういうのも恋愛の醍醐味だなあって思うので、どうぞ楽しんでくださいねv

 今までの更新分をサイトのほうにも公開したいなあって思うんですけど、タイトルがなかなか決まらなくって…(^^;)もうちょっと時間くださいねv


 そしていつも「よかったよ♪」やブログランキングへの一票ありがとうございますv これからもにゃおは頑張りますので、また気が向いたらぽちっと押してやってくださいなvv
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あたしの彼はご主人さま(3)-36
2006年06月09日 (金)
 言葉を失ったまま、首が痛くなるような角度で間近の顔を見上げる。冗談にしてもたちが悪すぎる。笑ってたら許さないと思ったけど。
「あいつにやらせたのか? セックスしたのか?」
 それでも、真顔で何度も繰り返すなんてひどい。あたしをそんなふうに思うなんて、お兄さんのことをそんなふうに見てるなんて、ひどい。
「何回やったんだ。今日が初めてか。それとも、もう慣れたか?」
 矢継ぎ早にぶつけられる、耳を疑うような質問。それがユーキさんの口から出てるなんて。ユーキさんがそんなことを考えてたなんて。
「あたし、あたしは、そんな……」
 怒りで唇が震える。ショックで身体が震える。
「なんて口説かれた? おまえから誘ったのか? 前に抱かれたときが忘れられなかったか?」
 ひどいっ。
「放して!」
 胸を両手で押し返して、思いっきり暴れた。あたしを見下す冷たい眼と、あたしと司さんがえっちしていたと決め付けるような言葉の衝撃が大きすぎて、ちゃんと説明する気なんて、とっくに消え失せていた。
 セックスしたのか。
 何回やったんだ。
 おまえから誘ったのか。
 頭の中で、ユーキさんの言葉が何度も何度もぐるぐる回る。
 あたしはユーキさんのことが好きなのに。どんな話を誰に聞いても、それでもユーキさんを信じようとしてるのに、ユーキさんはそうじゃないんだ。あたしを信じてはくれてないんだ。ユーキさんは、あたしと司さんがこっそり付き合ってると思ってるんだ。
 よりにもよって、そんなことを疑ってたなんて。
「ユーキさんなんかっ! さわんないでよっ、放して!」
「放さない!!」
 思いっきり胸を叩いたこぶしをつかまれて、動きを封じられる。近所迷惑になりそうな音量で怒鳴り返されて、一瞬身体が止まった。
「おまえは俺のものだ! 誰にも渡さない!」

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-37
2006年06月11日 (日)
 衝撃波のような大きな声に脳を叩きつけられて、全身の力が抜ける。その瞬間を見計らったように、ユーキさんはあたしの口の中に、ポケットから取り出した布をねじ込んできた。口を封じられたまま強く抱きしめられて息ができない。
「んんぅ? うーっ!」
 何をするのと心の中で叫びながら肩を振って逃れようとしたけれど、腕ごと抱きこまれた上半身はがっちり固められて一ミリも動かない。首を振って布を吐き出そうとしてもなぜか吐き出せない。唾液が溜まって吐き気がしてくる。
「誰にも渡さない。兄貴にも、他の男にも」
 呟くように言いながらユーキさんはあたしを軽々と抱き上げて、何もなかったような足取りで階段を降り始めた。アパート前の、駐車場兼用の通路広場を走り抜けた先に停まっていたのは、見覚えのある車。
「乗れ」
 後部座席のドアを開けると、彼はあたしをそこに乱暴に放り込んだ。叩きつけられたソファに手を付いて顔を上げる。すぐそこに、ユーキさんの歪んだ笑顔と鈍く光る手錠が見えた。
「ほら、後ろ向け」
 身体の向きを荒っぽく変えられて、両手を後ろ手にねじられた。がしゃりと鳴る、聞き慣れた音と冷たい感触が手首に巻きついた。そのまま座席に押し付けられて、お尻を高く上げた体勢で、スカートをめくりあげられる。引き千切ろうとしているようにショーツが下ろされた。
「うーっ!!」
 いきなり何すんのよっ。
「じっとしてろ」
 拒否するように暴れると、ぱしんと音を立てて平手でお尻を叩かれた。ソファに顔が押し付けられて息ができなくなる。脚のあいだに吹きかけられた熱い息に全身が震えた。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-38
2006年06月12日 (月)
 イヤだ。
 いくら相手がユーキさんでも、こんな状況でこんな気分で、誤解されたままされるなんて、絶対にイヤっ!
 でもソファとユーキさんの身体で押し潰されそうなくらいに強く挟まれて、動けない。逃れようと無意味に暴れれば暴れるほど、ちゃんと呼吸ができないせいで酸素が足りなくて、頭がぼーっとしてくる。背もたれに押し付けられていた顔を、首をひねるようにして方向を変えた。息をしようと大きく口を開くと、詰め込まれた布越しにソファに液体が流れ出るのがわかった。
「暴れるな。今、気持ちよくしてやる」
 低く嘲笑う声とほぼ同時に、熱い舌がねじ込まれた。ぬるぬると触れる感触に背筋に電流が走った。軽く入り込んで、そしてちゅぱちゅぱと音を立てて吸い上げられる。縁を、下から上へと丁寧に舐められてひざが震えた。
「う、う、うっ……!」
 必死で抑えても、それでも声が洩れてしまう。それに気をよくしたのか、舌はゆっくりと位置をずらしながら降りてきて、そして一番敏感なところを優しく叩いた。
「うううっ!」
 押さえ込まれたまま、手足が腰が、痙攣する。焦らすようにクリトリスをちろちろと舐められて、キスするように何度もついばまれて、軽く吸われて、強く閉じたまぶたの隙間から涙が流れた。
 声にさえならない。気持ちよくて、おかしくなりそう。
 あたしのそんな状況がわかったのか、肩を抑えていた片方の手が離れた。脚をもう少し開くようにひざの位置を変えられて、そして指先であそこを開かれる。ふっと息を吹きかけられてゾクゾクした。
「糸引いてるぞ」
 クスクス笑う、楽しそうな声。ちゅくちゅくと淫靡な水音を立てながら二本の指がそこをなぞった。そんな些細な刺激にさえ、スイッチが入ってしまったあたしの身体は反応してしまう。
「このまま一度、イかせてやるからな」
 周辺をなぞっていた指がずぶりと入り込んできた。ぐちゅぐちゅと、すごい音を立てながら出し入れされて前のほうの壁を指先で押されて、まぶたの裏が白く染まった。
 ダメ、もう……イっちゃう!


  -つづく-
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お言葉いただきました♪
2006年06月12日 (月)
 おはようございます、にゃおですっ☆
 今「おことばありがとうございます」って打ってたつもりで「おことば」で変換したら「男場」って出てびっくりしました。にゃおが打ち間違えただけなんですけどね、でも思わず目をパチパチしちゃいましたよっ!

 さてさて、ということで、お言葉いただきましたv
『あたしと彼の嘘のキス、一番大好きで とても良い作品だと思ってます★』
 きゃー、ありがとうございますっ!!
 第二部は、ちょっと終わり方が中途半端だったせいか、賛否両論いただいた作品なので、好きだって言っていただけるとなんだかほっとします。嬉しいです(>∇<)
 連載も、はい、頑張ります! 応援どうぞよろしくお願いしますv


 第三部は、おにーさんがすごい出張ってきて、一時はどうなることかとハラハラしてたんですけど、なんとかなりそうです。あと二つほど山かなー。頑張りますので、どうぞあたたかく見守ってやってください。m(_ _)m
 いつもいただく「よかったよ♪」とブログランキングの一票がにゃおの元気の糧です。いつもありがとうございますっ!!
 またよかったら、気が向いたら、ぽちっと押してやってくださいな☆
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あたしの彼はご主人さま(3)-39
2006年06月13日 (火)
 突き込まれている部分がひくひくと彼の指を締め付けるのが、自分でもわかる。理性を快感で塗り潰されて、声にならないうめき声を上げながら身悶えしながら、あたしはその瞬間を望んでいた。
「さあ、イけ」
 嘲笑う声と指、少し遅れてクリトリスを舌先で突付くように舐められて、そして身体の堰が切れる。
 イく、イくよおっ! イくイくイくっ!!
 頭の中で絶叫しながら、あたしは久し振りの、彼の手で与えられる絶頂に全身を何度も震わせた。


「ン……んあっ」
 ほんの少しのあいだ、あたしは気を失っていたらしい。
 口に入り込んだ彼の指の感触で意識が戻った。ずるり、という感じで唾液でドロドロになった布切れを取り出すと、彼はそれを投げ捨てた。続いて聞こえてきたのは、カチャカチャとベルトを外す音と、ジッパーを降ろす鈍い音。後部座席で、剥き出しのお尻を高く上げた恥ずかしい姿勢のまま、あたしは待っていた。
 ふいにころりと転がされて、手錠を掛けられた手を身体の下敷きに、後部座席のソファに寝転ぶ。淡い室内灯に照らし出されて陰影に沈む彼が、あたしをじっと見ているのがわかった。
「挿れるぞ、千紗」
「……はい、ご主人さま」
 低くかすれる声にいつもの返事をしながら、あたしはそっと目を上げた。強い光を放つまなざしは、この前最後に逢ったときと全然変わらない。
 彼はあのとき、愛してると何回も繰り返してくれた。懇願するように、他の男に抱かれないでと言ってくれた。絶対に迎えに行くからって言ってくれた。
 あのときと、同じ眼。
「千紗」
 ひざをつかむ手にされるがままに大きく脚を開くと、彼がそのあいだにゆっくりと座った。丸い先っぽがあたしのその部分に触れる。馴染ませるようにくちゅくちゅと何度か擦り合せてから、腰を進めるように圧し掛かるように、ゆっくりと彼が侵入してきた。


  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-40
2006年06月14日 (水)
「あ……、あ、ああっ」
「くっ、う」
 葵さんに挿れられたバイブとは比べ物にならない異物感に、思わず声を上げてしまう。久し振りのセックスは快感よりも苦痛のほうが大きいけど、でも彼が低くうめいてくれるのが嬉しくて、だから。
「ご主人さま、ご主人さま」
 ゆっくりと身体を揺すられながらうわ言のように呟く。
 降りてきた手がブラウスのボタンを一つずつ外した。キャミソールをスカートから引き抜いてブラをむりやりずらして、そしてその隙間から指が入ってくる。ちょっと痛みを感じるくらいの強さできゅっと乳首をつねられて、身体がびくっと震えた。
「あいつもこんなふうに抱いたのか?」
 耳に囁かれる酷い言葉に必死で首を振った。
「じゃあ、どんなことをされた? どうされるのが好きなんだ?」
「ちが……違います、あんんっ!」
 彼が上半身を起こすと、当たる場所が変わる。上のほうを重点的にこすられて身体が震えた。わざとのようにゆっくりと抜き差しされて腰が揺れる。彼はあたしのどこが弱いのか、全部知ってるから。
「何が違う? どう違う?」
「あたし、されてません。ご主人さまとしか、こんなこと、しません」
 息が上がってしゃべるのが苦しい。気持ちよすぎて、言葉を考えるのが難しい。
「じゃあ、なんで、あいつの車に乗っていた?」
「あ……葵さん、が、あたしに会いたいって。それで、司さんが迎えにきて。だから今日だけです。あたし、何もしてないし、司さんにそんな気持ちなんて、持ってません。本当です」
 葵さんの名前を出しても大丈夫なのかどうなのかはわからないけど、でも嘘はつきたくない。何より、変な誤解をされたくない。あたしと司さんはそれ以上の関係なんてないって、ちゃんとわかって欲しい。
「姉さんが?」
「はい、そうです。お姉さんに、会いました」

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-41
2006年06月15日 (木)
 その答えがあまりにも意外だったのか、彼の身体が完全に止まった。それでもあたしの身体の中にある彼の一部は、休みなくぴくぴく動いて、理性を少しずつ削り落とそうとする。なんとか思考を保とうと、ちゃんと話そうと努力するので精一杯だった。
「話しました。葵さんと。名刺も、もらいました」
「姉さんは、なんて?」
 その眼の陰りが薄れて行くのがわかる。あたしの言葉を信じてくれているんだと思うと、嬉しい。
「応援してあげるって。いつでも、電話していいって」
 言葉は違ったような気もするけど、でもそう言ってくれたと思う。でも、嘘はついてないけど、本当のことを黙っているけど。
 だって、葵さんにえっちなことをいっぱいされたなんて、女の人にイかされちゃったなんて、恥ずかしすぎて言えない。それに、男の人にされたのと違って、挿れられたのはバイブだし。でもそれがかえって恥ずかしいんだけど。
「本当だな? 嘘じゃないな?」
 すぐ近くで聞こえた声に顔を上げると、彼は泣きそうな眼であたしを見ていた。強くひそめた眉と、軽く開いた唇。大好きなキス。汗とオレンジのにおい。
「本当です。あたし、ご主人さまとだけ……あ、あああっ!」
 あたしの脚を両腕で抱え上げると、彼は突然激しく動き始めた。腰を強く突き出すようにこすり付けられて全身が震えた。
「千紗、千紗」
「ご主人さま。気持ちいい、気持ちいいです、くうっ」
 ぐいと、身体の奥の奥に彼のものが当たる。息が詰まるような一瞬の痛みと、引き抜かれるときの摩擦に身悶えした。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-42
2006年06月16日 (金)
「そんなにいいか。絡み付いてくるぞ」
 からかうように言いながらもスピードを緩めず、ぐいぐいと突きこんでくる。ある意味では彼らしくない真っ直ぐさに、逆にあたしは翻弄されていた。
「いいの、いいです。あ、ああっ!」
 のどをそらして喘ぐたび、低く唸る声が聞こえる。多分、彼もあんまり余裕がないんだと思う。そう言う感じの息遣い。
「あ、くっ! ご主人さま、もう、千紗は……」
「イきそうか?」
 低く訊かれて、反射的に何度も頷く。
「はい、イきそう、イきそうです。もう、もう、ダメっ! イくっ!」
 腰を振って彼のものを締め付けて、あたしは思いっきりのけぞった。
 彼の指が、あたしと彼が繋がっている辺りをさわった。クリトリスを軽くつままれて、浮き上がっていた意識にぴしりとヒビが入る。
「あああっ! あく、あ、ああっ!」
 身体の内側からお腹を突き破って出てきそうな勢いで出し入れされて、全身がガクガクと痙攣する。連続して襲ってくる、息をすることさえできないような強い快感に、思考が吹き飛ぶ。
「ま、またイく! またイきますっ! イっちゃうっ!!」
「千紗、出すぞっ」
 答える余裕さえなかった。気が遠くなるような強い快感に震えながら、彼の苦しそうなうめき声を聞きながら、あたしは何度も頂点を求めた。彼を深く求めた。彼を求める言葉を叫んだ。
 ――ご主人さま。
 彼に抱きしめられること、彼に名前を呼ばれること、彼の視線の前に素肌を晒すこと、彼の愛撫に狂うこと、彼とぴったり一つになること、身体の奥深くで彼を受け止めること。
 ずっと得られなかった叶わなかった、望み。今、その全てがあたしの前にあった。
 それがただ、嬉しかった。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-43
2006年06月17日 (土)
「確かに、姉さんの名刺だな」
 室内灯に透かすように眺めると、ユーキさんは納得したように頷いた。後部座席で彼の肩にもたれてその体温に口元を緩めながら、でもあたしはわざと不機嫌な声を出す。
「あたしの言うこと、信じてなかったんだ?」
「あ、うん。い、いや、そうじゃなくって。でもちょっと……。しかもこれ、プライベート用の名刺だしさ」
 慌てたように早口でしゃべりながら、彼はあたしを強く抱き寄せる。どう考えてもごまかそうとしてるなあって感じだけど。
「プライベート用?」
「うん、そう。ほら、メールアドレスが携帯電話のだろ? 仕事の相手にはパソコンのアドレスを出すから、あの人は」
「ふぅん?」
 そういうもんなのかな。
「千紗ちゃん、大丈夫だった?」
 疑問っぽい言葉を投げ掛けられて目の前にあった名刺から顔を上げた。あたしを見下ろしていた優しい微笑みと目が合って、ドキっとする。ボタンが外れてくしゃくしゃに乱れたシャツのユーキさんは、なんかいつもとちょっと違う感じにカッコいい。男の人がセクシーって、こういう雰囲気を言うのかも。
「大丈夫って、何が?」
「いや、初対面でプライベート用の名刺をもらうって、なかなかあることじゃないから。それに……あの人は、その……」
 もしかしてというか、もしかしなくても多分、あのことを訊こうとしてるんだろう。
 知ってるのかな、葵さんのこと。そりゃ知ってるかな。司さんだって知ってたみたいだったし。葵さんのあの態度からも、隠すつもりとかあんまりなさそうだったし。
 どうしよう。黙っておいたほうがいいかな。というか、あんまり言いたくないなあ。襲われたに限りなく近かったけど、でもあたし、その……何回もイっちゃったし。葵さんってすごくキレイだから、嫌悪感とかあんまり沸かなかったし。でも、もうあんな目には遭いたくないけど。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-44
2006年06月18日 (日)
「葵さんが、どうしたの?」
 なんでもない顔をしようとしてるのに、勝手に胸がドキドキしてくる。ユーキさんって鋭いから、わかっちゃうかも。こら落ち着け、心臓、なんて内心で呟きながら、あたしはじっと彼を見上げた。
「いや、あの人ちょっと変わってて……」
 言い難そうに口ごもるユーキさん。
「変わってるの? どんなふうに?」
 本当のことを言って、ユーキさんが怒り出したらと思うと、怖い。葵さんとまで険悪になっちゃったら、あたしはどうしていいかわからない。
 せっかく、あたしたちの味方になってくれるって言ってくれた人なのに。ユーキさんのお姉さんなのに。でも、ユーキさんに嘘はつきたくない。どうしよう。嘘つくのも本当のことを言うのも、どっちもイヤ。こう言う場合って、どうしたらいい?
「――いや、いい。なんでもない」
 助かったあ。
 思わず吐いてしまった溜息をごまかすように、あたしはユーキさんの胸に頬をすり寄せた。
「ユーキさんって、ヘンなの」
 ごめんなさい、ユーキさん。二度とあんなことされないように気をつけるから、今回だけ許して。心の中で謝りながら、でも口では違う言葉を呟く。
 大きく息を吸い込むと、えっちしたあとの、強い汗とオレンジの混じったユーキさんのにおいがする。汗のにおいって多分イヤなにおいだと思うんだけど、ユーキさんのこのにおいは大好き。そういうのってちょっと不思議。他の人だと絶対にイヤなことでも、ユーキさんにされるなら平気。
「そうだ、それだよ!」
 いきなり叫ばれて跳び上がった。
「な、なにが?」
 やばい。声がひっくり返った。
 でもそれを取り繕う暇もなく、がしりと両肩をつかまれた。何を言われるのかと考えた瞬間、ドドドと音を立てて心臓が早まる。ユーキさんの鋭いまなざしが真正面からあたしを見詰める。後ろめたさから、真っ直ぐに見返すことができなくて、あたしはパチパチとまばたきを繰り返す。
 うわあ、あからさまに挙動不審だ、あたし。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-45
2006年06月19日 (月)
「さっきから気になってたんだ。なんか変だって」
 なにが、へんなの?
 訊きたいけど、怖くて訊けない。聞きたくない。
「なんで、姉さんを葵さんって言うの?」
 は?
「兄貴のことだって、そうだし」
 え?
「俺のことは結城さんって言うのに」
「だって、ユーキさんはユーキさんでしょ?」
 ようやく意味のわかった言葉に確認に近い疑問を返す。言ってることはわかるけど、何を言わんとしているのかが全然わからない。手のひらに変な汗が沸いてくるのがわかる。ユーキさんはあたしの言葉に不服そうに眉をひそめて、優しく睨んだ。
「そりゃそうだけど。でも俺一人が名字って、千紗ちゃん、冷たくない?」
 えっとこれは、もしかして……。
「和真って呼んでよ」
「はえ?」
 間抜けな声を上げたまま、口が閉まらない。高まった鼓動が徐々に弱まって行く。安堵と脱力でぺちゃりと座席に伏せそうになった。あたしのリアクションに驚いたのか、彼の両手が肩から離れる。真ん丸な眼であたしを見てるのがなんとなくわかる、けど。
「どうしたの?」
「ユーキさん、可愛いーっ」
 曖昧に笑いながら力を取り戻すと、妙に真剣な眼と合う。ユーキさんがそんなつまんないこと気にしてたなんて、全然思わなかった。
「だから、『結城さん』じゃなくて」
 子どもみたいなその表情。
 あたしよりずっと年上なのに。おとななのに。おとなの男の人なのに。えっちのときはあんなにひどいことするくせに。ついさっきまでご主人さまだったくせに。
「そんなこと気にしてたんだ?」
「そんなことってなんだよ。重要なんだよ、俺にとっては」
 そういうと、ぷいとそっぽを向く。
 あ。拗ねた。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-46
2006年06月20日 (火)
 あのあと、もう一度えっちして数え切れないくらいキスして、そしてあたしは車から降りた。ゆっくりと、本当にゆっくりと暗闇に消えて行く白っぽい乗用車を見送って涙を拭いて、アパートへ戻った。真っ暗な部屋の灯りをつけて、模試に持って行ってた小さな水筒を洗いながら溜息をつく。
「なんかもう、すごい一日だったなあ」
 午前中は模試で、午後からバイトに行って、帰りに司さんの車に乗せられて葵さんと会って、変なカクテル飲まされてイロイロされちゃって。帰ってきたらユーキさんに司さんと浮気してるって誤解されて、車に連れ込まれて襲われちゃって。でも、誤解が解けたあとはすごく優しかった。髪を撫でてくれて抱きしめてくれて、身体中キスしてくれて、それに……何回もイかせてくれて。
 やっぱりあたし、ユーキさんが好き。
「司さんとも、うまく行くといいなー」
 あたしは、一度お兄さんと直接会って話をして欲しいって言った。勿論ケンカ腰じゃなくって、穏やかにきちんとおとな同士らしい話し合いをする場を持って欲しい、って。
 ユーキさんは、あんなヤツの肩を持つのかとか、あいつが断ってきたら知らないからなとか言ってものすごく渋りながら、でも最後には頷いてくれた。お兄さんのことをどう思ってるのかは訊けなかったけど、でも司さんはユーキさんのことを嫌ってるってわけじゃないって言ってたから、大丈夫かなって思ってる。でもケンカしちゃってもいいな。兄弟ってケンカしちゃうもんだって聞くし、それならそれでもいいんじゃないかな。大丈夫だよね。大丈夫だと、いいな。
 どうか、大丈夫でありますように。
 どんどん不安になって行く思考に思わず溜息をつく。葵さんがあいだに入ってくれないかな。二人ともどうもお姉さんには頭が上がらないっぽいから。だいたい、ユーキさんってちょっと子どもっぽすぎるところがあるよね。普段は落ち着いたおとなの人なのに。えっちのときはひどいこと言うのに。なのに。

  -つづく-
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あたしの彼はご主人さま(3)-47
2006年06月21日 (水)
「わかった。千紗ちゃんの言う通りにするよ。その代わり、俺の言うことも聞いてくれるよね」
 渋々頷いたあと、彼はそんなことを言い出した。明るい笑顔がなんだか逆にドキッとする。そしてあたしに出した要求は。
「俺を和真って呼ぶこと」
 嬉しそうな顔でなんだってそんなことを言うかな。
「だって俺だけって酷いだろ?」
 そんなところで対抗しなくてもって思うんだけど。それに今までの慣れとかあるから、つい言っちゃいそうだし。でもそう訴えると『結城さんって呼んだら、どこであろうともその場でキスするからね』ってにっこり笑って脅された。あの人だとホントにやりかねないから怖い。なんかもう、わがまま放題の子どもってカンジ。
 呟きながら、財布にしまっていた名刺を取り出した。
 ユーキさんにもらった名刺は、葵さんのと違ってビジネス用のものだった。彼はプライベート用のを渡したがってたみたいだったんだけど、でもプライベート名刺って名前と電話番号とメールアドレスしか載ってなくてつまらないから、こっちをもらった。ズラズラと怖いくらいに並んだ肩書きは半分もわからないけど、でもそれだけユーキさんが会社で頑張ってるって証拠なんだと思う。司さんも、ユーキさんは頭いいって言ってたし。みんなそう思ってるのかなって思うと、嬉しい。ユーキさんが認められてるってことがすごく嬉しい。
「でも、執行役員って、何するんだろう?」
 首を捻りながらテレビの電源を入れた。見覚えのない番組と画面の隅に浮かんだデジタルな文字に眼を見張る。もうすぐ、一時?
「うわー、もうそんな時間?」
 日付け、変わっちゃってる。
 慌てて制服を脱ぎ捨てて替えのショーツとパジャマとバスタオルを手にして、あたしはお風呂場へ駆け込んだ。本当は湯船でゆっくり浸かりたかったんだけど、もうシャワーでいいや。簡単に流すだけで。
 しゅわっと肌を強く叩く熱いお湯に、あたしはそっと眼を閉じる。
 大変だったけど忙しかったけど疲れたけど、でもユーキさん……ええと、和真さんと逢えたから、だからすごく幸せな一日だった。

  -つづく-
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