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2007年11月16日 (金)
「芝……」
「先生でも男の人だもんね。男の人って、ずるいんだねー」
ホントは、先生が困るってわかっていて、わざとこんなことを言ってるあたしのほうがずるい。それはわかっていた。佐上先生があたしを振り向きもせずに部屋を出て行った仕返しを藤元先生相手にしてるだけ。それもわかっていた。こういうの、八つ当たりって言うんだよね。最低だよね。
思わずついた溜息と先生の口から大きな煙が吐き出されるのはほとんど同時だった。先生はあたしをちらちら見ながら、それでも黙ったまま。カッチカッチとリズミカルな音が鳴り始めて、知らない交差点を車はゆっくりと曲がる。その先をしばらく進んでから車は道端に寄って、そしてきゅっと止まった。
「あのな、芝口」
短くなったタバコをぎゅっと押し潰すように灰皿に入れると、先生は身体ごと向き直るようにしてあたしを見た。ガリガリと頭を掻きながら深々と溜息をつく。何か言おうとして口を開きかけるけど、でも出てくるのは溜息ばかり。
何を言うのかなってちょっと意地悪い気分で黙っていると、先生はひざに両手を置いて、そのひざに額を打ちつけそうな勢いで、がばっと一気に頭を下げた。
「すまん、芝口」
――え?
「悪かった。謝って済むことじゃないのはわかってるが、でも、すまん」
思いがけないリアクションに、ぽかんと口が開く。
「さっきまで、俺は、俺だけの都合しか考えてなかった。おまえが怒るのもムリはない、というか、怒らない方が不思議だ。おまえは怒っていいと思う」
いや、その。怒るって言うか、あたしは拗ねてるだけで……。
「今はどうすればいいかまだ思いつかないが、おまえが納得してくれるように誠意を尽くすつもりだ。あいつにも俺からきちんと言っておく。本当にすまない」
いったん顔を上げて真正面からあたしを見て、でも先生はすぐまた後頭部を見せ付けるかのように深く頭を下げた。そのままでじっと動かない。
「えーっとぉ……」
重く長く続く沈黙に耐え切れなくなってとりあえずそう言うと、先生はびくっと肩を震わせた。それでも頭は深く下げたまま。
-つづく-
「先生でも男の人だもんね。男の人って、ずるいんだねー」
ホントは、先生が困るってわかっていて、わざとこんなことを言ってるあたしのほうがずるい。それはわかっていた。佐上先生があたしを振り向きもせずに部屋を出て行った仕返しを藤元先生相手にしてるだけ。それもわかっていた。こういうの、八つ当たりって言うんだよね。最低だよね。
思わずついた溜息と先生の口から大きな煙が吐き出されるのはほとんど同時だった。先生はあたしをちらちら見ながら、それでも黙ったまま。カッチカッチとリズミカルな音が鳴り始めて、知らない交差点を車はゆっくりと曲がる。その先をしばらく進んでから車は道端に寄って、そしてきゅっと止まった。
「あのな、芝口」
短くなったタバコをぎゅっと押し潰すように灰皿に入れると、先生は身体ごと向き直るようにしてあたしを見た。ガリガリと頭を掻きながら深々と溜息をつく。何か言おうとして口を開きかけるけど、でも出てくるのは溜息ばかり。
何を言うのかなってちょっと意地悪い気分で黙っていると、先生はひざに両手を置いて、そのひざに額を打ちつけそうな勢いで、がばっと一気に頭を下げた。
「すまん、芝口」
――え?
「悪かった。謝って済むことじゃないのはわかってるが、でも、すまん」
思いがけないリアクションに、ぽかんと口が開く。
「さっきまで、俺は、俺だけの都合しか考えてなかった。おまえが怒るのもムリはない、というか、怒らない方が不思議だ。おまえは怒っていいと思う」
いや、その。怒るって言うか、あたしは拗ねてるだけで……。
「今はどうすればいいかまだ思いつかないが、おまえが納得してくれるように誠意を尽くすつもりだ。あいつにも俺からきちんと言っておく。本当にすまない」
いったん顔を上げて真正面からあたしを見て、でも先生はすぐまた後頭部を見せ付けるかのように深く頭を下げた。そのままでじっと動かない。
「えーっとぉ……」
重く長く続く沈黙に耐え切れなくなってとりあえずそう言うと、先生はびくっと肩を震わせた。それでも頭は深く下げたまま。
-つづく-
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